« 「これらの彫刻を知っていますか」 | メイン | 「水芭蕉の群生地星置緑地」 »

2006年04月30日

「南極犬タロの剥製」

 犬種でいうと樺太犬であるけれど、南極犬といった方が通り相場の良いタロは、1958年南極越冬隊の帰国の際に調査船宗谷丸が接岸できず、その他の犬と一緒に南極に置き去りにされた。その後1年間南極の冬を生き延びた、タロとジロは翌年に南極に向かった越冬隊と劇的な再会を果たす。タロはその後4年余の南極での役目を終え、北大植物園で余生を送り、14歳7ヶ月の天寿を全うした。ジロの方は南極で死亡している。

 こんな経緯があって、北大の北方生物圏フィールド科学センター耕地圏ステーション植物園内にある博物館にはタロの剥製がある。映画「南極物語」の主人公にもなった、この国民的ヒーローと対面を果たす機会を窺っていた。秘境探検の出費を抑えることと、冬季は植物園は温室を除いて閉園であるため、植物園の入園料金が無料となる「みどりの日」の4月29日に出かけてみた。

 重要文化財にも指定されている、札幌農学校時代からの写真の建物が博物館となっている。室内のガラスのケース内に全身黒毛の写真のタロの剥製が収まっている。この剥製になったタロには後日談がある。ジロは死亡した南極から皮と頭の骨を持ってきて北海道で剥製にされ、国立科学博物館に研究資料として保管されている。兄弟犬のタロとジロが、死後東京と札幌に離れ離れになっているのはかわいそうだと、生まれ故郷の稚内市に一緒にさせる運動である「タロとジロを同居させる会」が設立された。北海道知事や札幌市長、北海道の著名人もこの会に参加した。結局はタロとジロは一緒になることはなかったけれど、死後も多くの人を動かした犬達であった。

 「みどりの日」に植物園を訪れるのは、咲き出した水芭蕉、キバナノアマナ、カタクリなどを鑑賞したり写真に収めたりするアウトドア派で、辛気臭い博物館の中に入る来園者はほとんどいない。まして、南極犬タロ、ジロの物語は約半世紀前の話となってしまっていて、年配者でなければ思い出すことがない歴史の一駒で、タロの収まっているガラスケースは小さな秘境となっている。

植物園博物館A.jpg

南極犬タロの剥製A.jpg

投稿者 esra : 2006年04月30日 02:58

コメント